
梅の実の活用_初収穫
初夏の爽やかな風が吹き抜ける季節、私は奈良の名所である「追分梅林」へ足を運び、梅の活動に参加してきました。
普段の忙しい日常から少し離れ、みずみずしい緑に囲まれて土や木々に触れる時間はそれだけで心地よいものですが、今回の体験は単なる「休日のリフレッシュ」以上の、深い気づきと感動に満ちたものになりました。
今回は、追分梅林が持つ知られざる歴史と、そこで収穫した梅を使った我が家の「梅仕事」のリアルな経過をお届けします。
4,000本がほぼ全滅――追分梅林の危機と「再生」への歩み
奈良の隠れた名所として知られる追分梅林ですが、実はかつて、絶滅の危機に瀕していた歴史があります。
今から約50年前、地元の「追分梅林組合」が丘陵地を切り開いたのが始まりで、最盛期には約4,000本もの梅の木が咲き誇る、関西有数の人気スポットでした。しかし2010年頃、周辺の環境変化による土壌悪化という予期せぬ事態が襲います。大半の木が枯死し、わずか70本ほどにまで激減。2011年には一度「閉園」という苦渋の決断を迫られました。
誰もが諦めかけそうになる中、「この場所を終わらせてはいけない」と立ち上がったのが、「一般社団法人 SPSラボ 若年認知症サポートセンター きずなや」さんでした。
きずなやさんは、若年性認知症の方々が社会と繋がり、主体的に働ける「農福連携」の場として梅林の再生をスタート。近畿大学農学部などとも協力しながら地道に苗木を植え続けました。近年では、その活動に関わった若者たちが奈良盆地を一望できるオートキャンプ場「OIWAKE PARK(追分パーク)」をオープン。
「農福連携」「若者のアウトドア拠点」「収穫した梅の六次産業化」が一体となった、持続可能な新しい地域再生のモデルとして、往時を超える4,500本の梅林を目指して今も一歩ずつ歩みを進めています。
農業のプロ、そして地域の情熱が育む「梅の実」
効率やスピードが重視されがちな現代のビジネスの世界とは異なり、農業の現場では「自然の時間軸」に合わせてじっくりと手間暇をかけることが何より大切にされています。
現地で実際に梅の木々を前にして手作業を体験させていただきましたが、プロの方々やボランティアの皆さんが一丸となって守り抜いてきた梅の実は、驚くほど張りがあり、爽やかで甘い香りを放っていました。
この五感を使って自然と向き合う手仕事の奥深さに、私はすっかり魅了されてしまいました。
我が家の梅仕事:梅シロップと梅酒のリアルな経過
追分梅林での素晴らしい体験と、地域の方々の情熱に刺激を受け、自宅に帰ってから早速、手に入れた新鮮な梅を使って「梅シロップ」と「梅酒」を仕込みました。
ここからは、我が家のボトルのリアルな経過レポートです。
1. ひと足先に完成!爽やかな「梅シロップ」
仕込んでから約3週間。氷砂糖がすっかり溶け、梅がしわしわと小さくなってエキスがしっかり抽出されたタイミングで、1.1Lの容器に移し替えて冷蔵庫へ保管しました。
少し残った氷砂糖も冷蔵庫の中で自然となじみ、綺麗な琥珀色のシロップに仕上がっています。一口味見をしてみると、きゅっとした心地よい酸味が引き立っています。
- おすすめの楽しみ方: 今の時期、お風呂上がりやリフレッシュしたい時に、炭酸水で4〜5倍に割って飲む「梅スカッシュ」は最高のご褒美です。また、牛乳や豆乳で割ると、クエン酸の作用でとろみがつき、マイルドな「飲むヨーグルト風」に変化してこちらも絶品です。
2. じっくり熟成を待つ「梅酒」の楽しみ
一方、6月2日に仕込んだ「梅酒」は、1ヶ月強が経過したところです。 底の氷砂糖も溶けきり、透明だったお酒がほんのりと淡い琥珀色に色づき始めていますが、梅酒としては「まだまだこれからが本番」。
アルコールの角が取れてまろやかになる「半年後(冬頃)」、そして本当の完成形を迎える「1年後」を楽しみに、冷暗所でじっくりと寝かせています。時間が美味しくしてくれるのを待つ、贅沢な時間です。
おわりに
私たちが何気なく口にする一杯の梅スカッシュや梅酒。その爽やかな酸味の後ろには、一度は全滅しかけた梅林をここまで蘇らせた認知症の当事者の方々、地域の方、そして熱い想いを持った若者たちの汗と時間が隠されています。そう思うと、手元のグラスの味わいがより一層深く、愛おしく感じられます。
地域の文化や自然を守り、未来へタスキを繋ぐ素晴らしい活動。私も微力ながら、こうした地域の魅力や素晴らしい取り組みをこれからも応援し、発信していきたいと強く思いました。
皆さんもぜひ、季節の節目に追分梅林やOIWAKE PARKへ足を運び、その豊かな自然と人々の想いに触れてみてはいかがでしょうか。
