今回は下諏訪町に鎮座する下社秋宮(しもしゃあきみや)を訪れました。
重厚な森の雰囲気の上社とは異なり、秋宮は門前町から続く石畳の参道や、境内に湧き出る温泉など、どこか華やかさと生活の息吹を感じさせる聖域です。夏の陽光に照らされた秋宮の散策レポートと、そこから得たビジネスの気づきを綴ります。

石畳の参道と、青葉に包まれた社殿を巡る
下諏訪のレトロな街並みを抜け、緩やかな坂道の参道を進むと、下社秋宮の入り口が現れます。
鳥居をくぐり、清々しい青葉に包まれた参道をさらに進むと、まず目を引くのがこちらの巨大な「寝入りの杉」です。

神楽殿を象徴する、この見事な大注連縄(おおしめなわ)。その重量はなんと約1トンもあるそうです。この注連縄を目にするだけで、秋宮へ来たという実感が湧きます。
さらに奥へと進み、重要文化財に指定されている幣拝殿(へーはいでん)にて参拝。

夏の陽光が社殿の木目を美しく照らし、時折吹き抜ける風がとても心地よく、心身ともにリフレッシュできる時間を過ごせました。
【ビジネス視点】温泉の湧く手水舎と、老舗「新鶴本店」に見るブランド戦略
さて、秋宮の散策の中で、私のビジネスセンサーが反応したポイントが2つあります。
独自の体験価値(UX)を提供する「御神湯」
秋宮の手水舎は、なんと温泉が湧き出ています。
諏訪という温泉地の風土を象徴するこの手水舎。「神社で温泉を浴びる(清める)」という他では味わえない独自体験は、参拝客にとって強力な記憶(体験価値=UX)となります。
これはビジネスにおいても、自社のサービスや商品にいかに「その場所、その会社でしか得られない独自体験」を付加できるか、という差別化戦略の好例と言えます。

「変わらない」ために「変わり続ける」|老舗「新鶴本店」のサプライチェーン
参拝後、門前にある明治6年創業の老舗菓子店「新鶴本店(しんつるほんてん)」へ立ち寄りました。

こちらの名物「塩羊羹」は、創業以来変わらぬ製法で、薪を使って小豆を炊き上げているそうです。
ここで注目すべきは、「薪で炊く」という伝統的な製法(サプライチェーン)を150年以上維持し続けているという点です。
SCM(サプライチェーン・マネジメント)の視点で見れば、現代において「薪」という不安定かつ手間のかかる燃料を安定調達し、均一な品質の羊羹を作り続けることは、莫大なコストとリスクを伴います。
しかし、新鶴本店は、その手間こそが「新鶴の塩羊羹」のブランドの核心(核となる価値)であることを理解し、効率化の波に流されずにそのサプライチェーンを守り続けています。
「伝統の味(変わらないブランド価値)」を維持するために、「製法や調達(変わらないための努力)」を変えずに続ける。
この老舗の覚悟と戦略は、地方産業の6次産業化やブランド構築、あるいは中小企業の事業承継を考える上で、極めて重要な示唆を与えてくれます。
おわりに
夏の諏訪大社下社秋宮参拝は、温泉の湧く風土に癒やされると同時に、老舗企業の「ブランドとサプライチェーンのあり方」について深く考えさせられる素晴らしい時間となりました。
風土を歩き、現場の体験をビジネスの論理へと昇華させる。
これからも、このフィールドワークから得られる気づきを大切にしていきたいと思います。
